どうとんぼり神座 道頓堀店 でおいしいらーめんを食べてみた。

幼い頃の私はラーメンが大嫌いでした。

ラーメンが嫌いな子供って珍しいと思います。私はそんな珍しい子供の内のひとりでした。家族で中華料理屋さんに行くと、私は決まってチャーハンを注文しました。二人の弟がいたのですが、弟たちは必ずラーメンを注文していました。私はいつも、鼻をつまんで横を向いて食べていたことを覚えています。ラーメンが嫌いだった理由。それは、当時のラーメンで使われていた、「かん水」の匂いが苦手だったのです。

小さなお店から、強烈なかん水の匂いが…。

十代の頃。友達数人で、ミナミに遊びに行きました。腹が減ったのでラーメンでも食いに行こうとなりました。私は嫌いな食べ物は多い方でした。しかし、嫌いな食べ物があることが友達にバレるのが恥ずかしく、外では無理をして食べていました。おかげで苦手意識を克服することができた食品が数多くあります。ラーメン嫌いは治ってはいませんでしたが。

友達に連れていかれたラーメン屋は、ずいぶんとうらぶれた場所にありました。道頓堀の大きな通りを南に入った狭い路地裏。となりがパチンコ屋で、路地の奥は景品交換所となっていました。そして狭い路地の右手に、黄色が印象的なとても小さなお店がありました。

そのお店には、ドアも引き戸もなにもなかったように思います。お店は完全に開放されており、ラーメンの良い香りが路地裏に漂う…はずでした。

実は、そのお店のラーメンは、他店にも負けない、強烈なかん水臭さを放っていました。

こんなに小さいスペースで、こんなに臭い麺を食べないといけないのか。

10人くらいは並んでいたと思います。自分たちの順番を待ちながら、私はかん水の恐怖と闘っていました。

ラーメンが大好きになった日。

三十分ほど待ったでしょうか。いつものやせ我慢の時間の到来です。ぎゅぎゅう詰めの席に座り、右手の入り口付近の壁にメニューが貼ってあります。おいしいらーめん。他にはほとんどメニューがありません。随分とストレートなネーミングのメインを注文し、気持ちの悪いラーメンという食品の箸休めのために、おにぎりも頼みました。

おにいさんが中華鍋を振るう姿を暫し眺めていると、臭い物体が目の前に現れました。

匂いを嗅ぐだけで吐き気がする食べ物。ラーメンです。

隣にはおにぎりが。おにぎりといっても、お弁当用の型で作った小さなご飯のかたまりに、のりしおがふりかけられてるだけ。そうはいっても大事な箸休めです。箸休めのおにぎりは、苦しくなってくる終盤のためにおいておくべきです。

強烈なかん水の匂いの中、意を決してスープを一口。…うまい。スープがうまい。これはラーメンのスープじゃない。コンソメスープだ。

…表面に油が浮いてる。中華鍋で豚肉を炒めて出た豚の脂だ。コクがあってうまい。スープばかり飲んでいるわけにはいかない。白菜も食べなきゃ。かん水臭い麺も食べなきゃ。

うまいスープとともに、苦手な中華麺を食べ進みます。スープのうまさと、想定外の斬新さにかん水の臭さが完全に負けていきます。嫌いな食べ物がバレたくない一心で、無理に食べ始めたつもりだったのですが、途中からは「こんなにうまいもの食ったことがない。ラーメンがこんなにうまいとは知らなかった。」感動に変わりました。食べ物で感動したのは、この日が初めてだったと思います。

ラーメン嫌いがバレなくてよかった。なんて思いませんでした。私の心を支配した感情は…

「また来よう。弟たちに自慢してやろう。俺は日本一うまいラーメンを食ったぞ。おまえらそんなの食ったことないだろと。」

長い年月の流れを感じました。

道頓堀の見慣れた風景を東の堺筋方面へ。見慣れた光景も、ここ数年は何故か異国情緒を感じてしまいます。日本人俺だけ?日本語で大丈夫なん?て感じです。

この辺なんだけどなあって所に、金龍ラーメンが。

金龍の隣もラーメン屋。ここら辺は、胡散臭い叩き売りなんかをやってた所やね。で、この二軒のラーメン屋の間の路地を入ってみると…

あった。無事に存在している。ここが、神座発祥の地。

当然ながら雰囲気は随分変わっています。奥のパチンコ屋の景品交換所が、神座になってます。うらぶれた路地裏も、ずいぶんと小ぎれいに明るくなった印象です。で、写真左手にも神座の店舗が。

そして、写真右手の店舗こそが、昔懐かしい狭苦しい店舗…ってずいぶん奥行きが広がってます。かつては2メートルくらいだった店の幅が、7メートルくらいになってないですか?

広々とした店内に食券制となっていました。お店の中も、かつての面影は全く残っていませんでした。にしても…神座一号店の入り口に店を出せる金龍と四天王の肝っ玉は恐るべし。

広々とした店内と厨房。もう屋根裏には用がありませんね。

懐かしの味を、懐かしの場所で味わってみる。

これですよ。おいしいらーめんにおにぎり。見た目は当時のまま。今や神座も、餃子だの唐揚げだのメニューが豊富にありますが、当時はそんなものを作れるスペースがありませんでしたから。

このおにぎりだって、炊飯器が二つあって、そのうちの一つは屋根裏に置いてるみたいでしたからね。おにぎり頂戴って言って、「ない!」ってなったらおにいさん屋根裏に行ってたし。

御託はおいといて、食してみるべし。うん。あれ?うまいぞ。

いや、正直期待してなかった。だって、味が全然変わってしまったのを知っていたから。だけど…うん、間違いなくうまい。決して昔のまんまの味ではない。かん水の匂いだって感じない。それでも、昔に近い味がする。

実は、多店舗展開を始めて以降の神座は別物だと思っていた。心斎橋店が出来た時、雪平鍋で調理をしているのを見てがっかりした。食べて二度がっかりした。中華鍋で炒めた豚のコクがない。ショックだった。それ以降も近所に店が出来たりしたが、昔の味は今やどこにもないと思っていました。初めてスープを飲んだ時の感想。コンソメスープ。そして豚の脂のコク。それらを感じなくなっていました。

昔とは違う。でも、あっさりしたおいしいらーめんだな。

だけど、ひさしぶりにあの場所を訪れて食べたおいしいらーめんは、あの懐かしい味がする。

もしかして、一号店である道頓堀店と多店舗では味が違うのだろうか。確か、雪平鍋を使い始めた時期も、道頓堀店では中華鍋を使った同じ味だったことを思い出した。(現在は雪平鍋は一切使っていないそうです。)

らーめんを作ってくれたおにいさんに聞いてみると、全店舗全く同じ味だそうで。

うーん。思い出の地で食べるということが隠し味にでもなってしまったのでしょうか。

それでも間違いなく言えることがあります。今日食した一杯は、初めて食べた時と同じくらいうまかった。ひさしぶりに感動した。

かん水臭さがなくなったぶん、今日のほうがうまかったかもですよ。

底辺らしく、おいしいスープ完食させていただきました。本当においしかった。ごちそうさまでした。

 

底辺のグルメとは、底辺たる底辺住男が、おいしいお店のおいしい食事を紹介する記事です。決して登場するお店や料理が底辺というわけではありません。ご理解の程よろしくお願いいたします。

 

 

底辺住男

馬鹿です。低学歴です。 社会の底辺ゆえに、不平不満を漏らすことで傷ついた自尊心を満たします。 腹が減ったら飯を喰らいます。 低知能ゆえに、本能に支配される低俗な動物です。 それでも死ぬまでのあいだは生きているようです。

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